６８．自然の摂理

今日は大雪だった。
寒さには結構、強い俺でも厚着をしているから、あの人は、もっと辛いかな
------って思ってたんだけど、そうでもないかも。
「結構、降ってるなぁ」
「そうだね」
何気ない会話をしている中でも、茂くんは雪を見ている。
「何か嬉しいそうだね。雪、好き？」
「おん。好きやで。何か分からへんけど、テンションがあがってしまうんよ」
「うん、気持ちは分かるよ」
「……山口」
「ん？」
「お誕生日おめでとう」
そういえば、そうだったな。すっかり忘れていたよ。
「ありがとう」
「めでたい日なのに、明日は…」
「しょうがないでしょ、おじいちゃん。これも仕事なんだから」
「そうやけど-----って、誰がおじいちゃんや！」
「あはははっ!!!」

明日がどんな日でも俺は変わらないんだと思う。
それだけは分かる。
俺はこの人と何気ない会話をして、笑っているんだと思う。

２．そこに在るもの

俺があんた達に初めて会ったのは、今みたいに雪が降っていた次の日だった。
あの時、俺や村の人達は、絶望していた。
あの時の雪は、俺達にとって、絶望の雪でしかなかった。
異様な程に白い雪は、今でも忘れない。


でも、次の日にあんた達が来て、絶望から希望の雪へと変わった。


あんた達は、覚えていないだろうけど、俺は覚えているよ。

だから、俺は---------


「松岡？」
「おい、早く来いよ！おいて行くぞ！」

あんた達を守りたいなんて思わないし、出来ないって思っている。
でも、あんた達と並んで行けるように、
俺はここに来たんだ。

１６．光を見る

「茂くんって、空を見るの好きだよね」
「おん。あまり変わっていないようで変わっているのが好きや」
「そうなんだ」
「･･･時間や天気、季節などによって、空の感じが違うねん。今の時季やったら、夕方５時ぐらいが好きやな」
「へ～」
「夜１０時とかも捨てがたいんやけど、夕方５時ぐらいの夕暮れと夜の中間あたりの感じが好きやねん♪」
「そっか～」
「こんな話、つまらへんよな。スマン×２」
「ううん。そんな事ないよ。貴方の話は楽しいし、好きだよ」
「自分、良くそんな恥かしい事、言えるなぁ」
「貴方の方が、もっと恥かしい事、言ってるでしょうが！」

７４．流れる

「長瀬？何やってんだ？」
「あっ、太一くん」
長瀬は流しでぼーっとしていた。
「お前！何、水流しっ放しにしてんだよ！？」
俺はそう言いながら、水を止めた。
「いや、手を洗っていたら、水が冷たくて･･･」
「当たり前だろ！もう１１月だぞ！！」
「うん。でも、冷たいなって思いながらも気持ちいいなぁって思ったんだ」
「気持ちいい？」
「うん。冷たくて気持ちいいって思ったんだ」
「だから、流しっ放しで、ぼーっとそこにいたのか？」
「はい！！」
「そうか･･･でも、水がもったいないだろうが！！」
「ごめんなさい！！！」