駿河桔梗の完全個人趣味ブログです。
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スケープゴート -他人の罪を背負う者-
お題は『ペトルーシュカ』様から
【駿河桔梗から一言】
リハビリ③です。
今まで書いていたお題の設定とは違います。
少しずつ書けていければ良いなぁ…と思っています。
※特殊設定です。メンバーの誰かが故人です。
苦手な方は見ない方が良いと思います。
(14/03/05UP)
3.いけにえのなみだ
「俺、長瀬智也を調べているんだ」
と、俺の前に現れた国分太一という青年は記者で、長瀬の事件に興味を持ち、個人的に調べているらしい。
そして、長瀬の世話をしている俺の存在を知り、会いに来たらしい。
「兄ィ、まだ開店前なんだから勝手に入ってこないでよ」
「堅い事言うなよ、松岡。俺とお前の仲だろ」
「親しきにも礼儀ありって言うじゃん」
グチグチと言っているが追い払わないから、俺は勝手に席に着く。
戸惑っている国分さんにも席を勧めた。
国分さんも座ったら、松岡も諦めて、開店準備を再開させた。
話の内容が内容だから、あまり他人に聞かれたくないという事で、俺が良く行く居酒屋に入った。
居酒屋の店主の松岡昌宏とも親しくさせてもらっているし、こいつに話を聞かれても大丈夫という自信があったから此処にした。
「それで国分さんは俺に何を聞きたいの?」
「太一で良いよ」
太一に質問され、俺は答えれる範囲で答えたが、俺はほとんど長瀬の事は知らない。
「……それって、10年くらい前の無差別殺人事件だよね…?」
それまで開店準備をしていた松岡が急に話に入ってきた。
「そうだけど…何かお前、知っているのか?」
「いや、知っているっていうか…」
松岡は言葉を濁らせる。それは、結構珍しい事だと思う。
「…俺…その事件…の現場にいたんだよ」
「「…はっ!!?」」
俺と太一は松岡の発言に驚き、大声を出してしまった。
松岡は慌てて、
「いや!現場にいたっていうか!犯人を捕まえてる所を見たっていうか!!」
「「……」」
「…俺、実はその事件があった村の近くの村の生まれで…」
松岡は少しずつ語り出した。
「たまたまその日は事件があった村との境にある山を探検していたんだよ。そしたら、何か叫び声が聞こえて…」
松岡は眉間にしわを寄せて語る。
俺と太一は無言で松岡の言葉を聞く。
「叫び声が聞こえた方向に向かうと小さい家があって、玄関近くで俺と同じぐらいの子が大人5・6人に取り押さえられていたんだ。その光景が異様で凄く鮮明に覚えているんだ」
松岡は思い出すのが辛いらしく、眉間のしわを更に深くする。
「その子が“長瀬智也”だったのか?」
「うん、多分…。その子が泣いて叫んでいたんだ…。そしたら、小さい家からも大人達が出てきて、何かを運んでいたんだ…多分、遺体だったんだと思う。布か何かがで隠されていたから分からないんだけど…その子が「その人に触るなッ」とか「その人を返せッ」とか…そんな事を叫び続けていて…今にも取り押さえている大人達を振り払って、“その人”を取り戻そうとしていたんだ。それでも大人達は無視して…“その人”が見えなくなってしまったら…その子は絶望したかのように動かなくなったんだ。そんな状態の子を取り押さえていた大人達も連れて行ってしまったんだ…」
「「……」」
俺も太一も松岡が話し終わっても、何も言えずにいた。
少しの間、無言の時間があった。
「…本当に殺したのかなぁ…」
その言葉は誰が一体言ったのか…。
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