１９．重複する意識

僕は皆と話しているのが好き。
皆が楽しそうに話しているのを見るのが好き。
皆の笑顔が好き。
その笑顔を僕に向けてくれると嬉しいし、安心する。
でも、ふと僕がここにいちゃいけないような気がしてしまう。
そんな気持ちになってしまうと、
僕は何故か皆から離れてしまう。
でも、離れたくないのに、
そんな気持ちが身体全身を埋め尽くしてしまって動けない。


茂くんは時々、全てを拒む。
そう･･･全てを。
でも、気付かない振りをする俺。
許さないよ。
全てを拒む事なんて。
俺やあいつ等までを拒むなんて、絶対に許さない。
だから、
いつものように話して、いつものように笑いかける。
そうすると、茂くんは安心したかのような･･･
少し心配な顔をする。
･･･なんて顔をするんだよ、貴方は。


僕はここにおってもえぇの？
そんな事を聞く事なんて出来へんけど、
いつものように笑いかけてくれると、
やっぱ嬉しいわ。
心の奥には、あの気持ちがある。
でも、僕は皆の事が大好きなんよ。
だから、どうか・・・

５４．夕焼けの空

いつの間にか寝てしまった俺。
「・・・茂くん」
「おっ！起きたか、山口。おはよう」
目を覚まし、最初に見たのは、紅く染まるいつもの笑顔だった。
「おはよう。ごめん。茂くんの場所とっちゃった」
「うん？ええよ」
「それ、長瀬の手紙？」
背伸びをしながら聞くと、クスッと笑う。
「そやで。相変わらず、元気そうや」
「あいつらが元気じゃない時なんてなかったじゃん！！」
茂くんは「そうやな～」って、笑っていた。
その顔は本当に嬉しそうだった。
「そういえば、茂くん。どこに行ってたの？」
「うん？松岡がココに入隊が決定したらしいんよ」
「やっぱり入るんだ！」
「そうなんよ。松岡の夢が叶うんやね」
そう言う茂くんの顔は変かもしれないけど、親みたいだった。
「でも、松岡も珍しいよな！ココに入隊希望って！松岡の実力なら、もっと違う所にも入れるのに」
「それは山口もやで」
「俺？」
「そうやで。山口の実力だったら、ホンマに違う所にも入れるんに、ココで良かったん？」
「いいんだよ！俺は、ココが合っているから」
「さよか･･･」
「さよですよ♪ンじゃ、茂くん。行きますか！」
「えっ!!どこに？」
さっさと行く俺を追いかけて隣を歩く茂くん。
「どこに？って、新入隊員さんの所だよ」
そう言って俺は茂くんを見ると、驚いた感じで目を見開いていた。でも、すぐ笑顔になった。
そして、俺達は歩いて行く。

５２．鮮やかな笑み

貴方が大切だから願う。
笑っていて。
貴方の笑顔を見ているだけで落ち着く。
自分が自分でいれるから。
笑っていて。

あんたの笑顔を見ているとほっとする。
それはあの人も同じ。
あの人があんたの笑顔を見ている顔は本当に幸せそうだから。
そんなあの人を見ると俺も嬉しいから。
どうか笑っていて。

アナタの笑顔が苦手だった。
全てを知っているクセに笑っているアナタが苦手だった。
でも、笑って。
全てを許してくれるその笑顔は苦手だけど、嫌いじゃないから。
笑っていて。

あなたの笑顔が好きです。
笑顔が見れると皆、嬉しそうだから。
少し恥かしそうに･･･
気まずそうにしている人もいるけど、あなたの笑顔が皆、好きだから。
笑っていてください。

皆の笑顔が好き。
皆の笑顔が見れると僕も笑っていられるから。
皆の笑顔が綺麗で眩しいから。
ずっと守りたいと思う。
笑い続けていて。
そしたら、僕は生きていけるから。
僕の為に笑っていて。

４４．月夜の散歩

「ちょっと、あんた！そこで何やってんのよ！？」
「あっ、松岡」
この人は突如、いなくなった。
「あっ、松岡-----じゃないよ！突然いなくなるんじゃないよ!!」
「いや、散歩しようと思ってな」
「そうだったら、それを言ってから行きなさい。ビックリするでしょうが!!」

この人の部屋に入った俺は、すぐ部屋を出ていき、かけて行った。
何だか怖かった。
部屋が真っ暗で、誰もいないなんて良くある事。
でも、この人の部屋を見て、身体から血の気は引いたのが分かった。

それなのに、この人は、俺が叩いたおでこをさすっている。
もう溜息がでるよ。
「すまんなぁ、松岡」
「----ったく。本当にそう思ってんの、あんたは！
それに、そんな薄着で散歩なんてしないでよね!!」
「ま･･･松岡だって同じような格好やん」
「誰のせいよ！！」
「･･･すまん」
「------はぁ。散歩するなら、マフラーとかしてからしてよね。あんたは風邪引きやすいんだから」
「・・・なぁ、松岡。ときどきマフラーとかせんで、外に出たいと思った事あらへん？」
「何、急に言うの、あんた」
「最初は、僕もマフラーしようと思ったんよ。でも、何か、やになってしもうて、そのまま出てきたんよ」
「・・・」
「そしたらな、いつもは寒いとかしか思っていた風が凄くな、気持ち良かったんよ。白い息もしょっちゅう見てんのに嬉しくなってしまったんよ」
「・・・」
「松岡？松岡、どないしたん？」
「･･･帰るよ」
「ま･･･松岡！？」

僕の腕を引っぱりながら、前を歩く松岡。

　　　-----　暖かいなぁ。

僕はきっと、確認したかったのかもしれへん。
自分が生きているという事を･･･。
でも、外に出なくても良かったんやな。
「ありがとな」
「･･･何か言った？」
「なんも。それより寒いから、はよぅ帰ろ」
「だから、誰のせいよ!!?」