３０．箱庭

「…いた」

俺が探していた人はベンチに座っていた。
そこは俺が探していた人以外は誰もいない小さな広場みたいな場所だった。
俺はこんな場所があるなんて知らなかった。
そこは俺がいる場所とは別の空間のように見えた。
俺が探していた人は、いつもかけている眼鏡をはずし、どこか一点をを見つめていた。
「…茂くん？」
「お～、長瀬。どないしたん？」
声をかけると、茂くんは俺の方に顔を向け、笑った。
「山口くんが探してましたよ」
「そうか～。長瀬は一緒に探してくれたん？」
「はい!」
「おおきにな」
「いえ!こんな所あったんですね」
「長瀬はココ初めてか？」
「はい!」
「僕はココが好きで時々、来てるんよ」
「俺も何か好きですよ」
この小さな広場みたいなココは周りが木々や広場に囲まれていて、とても静かな場所で、時々、話し声や何かの物音が聞こえるけど、気にならなかった。
「ほな、行こうか」
茂くんがそう言い、俺も一緒に歩いて行った。

２８．言えないよ

俺がココに来た理由は…俺でも分からない。
茂くんから頼まれた事が嬉しいって思ったし、太一くんと一緒にいるのも好きだから深く考えてなかった。
ココに来たのを悔いた事なんてないし、ココにいるのは楽しいって言ったのも嘘じゃない。
俺…ココに来て良かったって思う。
ココに来なかったら、知らなかった事も気付かなかった事もあっただろうし。
俺は今もそういう事を感じながら、ココにいる。
理由なんて、あってもなくても俺的には、あんまり関係ない。
俺はココに来て良かったって思うんだから、それで良いと思う。

９９．紙一重

「なぁ、長瀬。お前、何でこっちに来たんだ？」
「えっ？」
「えっ？…じゃねぇよ。お前はこっちに来る理由ないだろ」
「えっと…邪魔ッスか？」
「邪魔と言っちゃあ邪魔だな。図体ばっかりでかくなりやがって！」
「それは太一くんが小さいだけじゃ…いっ…痛いです、太一くん!!!!」
「誰が小さいって…自慢か自慢してんのか…そうか×２」
「ごめんなさい！そんなつもりはないんです！だから技をかけないで下さい!!」
「…ちっ。で、何でこっちに来たんだ？」
「…来ちゃ駄目ッスか？」
「そんな事は言ってないだろ。
只、お前はこっちに来なくていいだろ。あっちにいる時、楽しいそうだったじゃんか」
「俺、今も楽しいッスよ」
「…」
「俺、今も昔も楽しいッスよ。太一くんと一緒にいるの好きッスから」
「あっそ…」
「あっ、太一くん。照れてるんッスか！可愛い…って、太一くん、何でまた!!」
「…お前、俺を馬鹿にしてんだろッ」
「…俺がいつバカにしたんですか～?!只、可愛いって言っただけじゃないですか?!むしろ、誉めてますよ!!」
「可愛い…は誉め言葉じゃ…ね～ッ!!!」

１４．記憶の狭間に

俺があの人達に助けてもらった時に決めたんだ。

あの人達の傍にいきたい…って。

だから、その為にいろいろやったんだ。

そして今、少し近くにいる。
でも、まだ遠い。
俺があの人達の部隊に入隊したい事を知ったあの人達は俺に会いに来てくれた。
会って話をして、ちょっと(?)イメージが違かったんだけど、それでも、あの人達の傍にいきたい気持ちは変わらなかった。
いや、もっと気持ちが強くなっていた。
俺はあの人達の傍にいても恥じないようになりたい。
それは、只の俺の気持ちで自己満足なだけだ。
あの人達は知らないと思う。
もし、知っていても気にしないと思う。
でも、俺が嫌なんだ。
そう、周りがどうこうじゃなくて、あの人達に少しでも幻滅してもらいたくない…っていう俺の感情の一部だけ。
凄く単純で笑ってしまう。
それでも、こんなに前を向けれるようになったのは、やっぱりあの人達だ。

…やっぱり凄ぇな、あの人達は。