１５．メモリーカード

「茂くん、何やっているの？」
俺が部屋に入ったら、茂くんが足を押さえていた。
「太一に蹴られた…」
「何でまた？」
茂くんは、顔を俺に向け、ふにゃっとした顔をした。
ごまかしたな。
俺は溜息が出た。
相変わらずだな…。

太一に言った言葉は僕の本心。
人がどうあれ、自分が良いと思っているなら、それでえぇと思う。
だけど、これに矛盾を感じる時もあるコトを僕は分かっている。
僕がそうやから。
太一に言ったコトは本心。
そう言って、僕は僕自身に言い聞かせているのかもしれへん。

７３．不思議な言葉

「茂くんは何で俺を連れてきたの？」
「？」
茂くんは不思議そうに、ぽかんとした間抜けな顔を俺に向けた。
「何でそんなコト、聞くん？」
「何となく」
「……。う～ん。理由なんて特にあらへんよ。何となくや」
確かに初めて会った時もそんなコトを言っていた。
「ふ～ん」
「…納得していない顔やな。何かあったんか？」
「別に…」
ないと言ったら。嘘になる。だけど、関係ない。
自分が只、気になっただけ。そう、気になっただけ。
「別にえぇやん。他人がどう言おうが、関係あらへんよ。自分が良いと思っているなら、それでえぇやん」
「…何それ。意味が分かんない」
茂くんは、苦笑のような良く分からない顔して、「さよか」と言った。
「太一は何で僕についてきたん？」
「何となく」
茂くんは、かみ殺した笑いをしながら、俺が入ってきた時と同じように書類に目を通し始めた。
何か、それが凄くムカついた。
椅子に座っている茂くんの足を蹴ってから、俺は部屋を出て行った。

３３．無音

夏は夜っていう。
『確かに』と思うコトがある。

夏の夜は短い。
そんな中、眠れなくて、手持ち無沙汰でいると、周りを照らしている月が見えた。
夜なのに、空が凄く明るく感じて…見惚れてしまった。

夏の夜は短い。
だから、月の存在時間も短い。
高い位置にいると思ったら、あっという間に低い位置にいる。
だけど、そんな短い時間で、輝き、自分の存在を“これでもか”と出す。
だから、綺麗なんだと思う。
見ていたいと思わされてしまう。
そう思っていると、段々違う明るみが出てきた。

本当に夏の夜は短い。
これから、寝ようか考えてしまうヨ。

９３．生きる上での矛盾

俺はポジティブだと思う。
あまり、クヨクヨしないし。

周りにも
『お前って、悩みなさそうだよな』
って、言われるコトがある。

俺にだって、悩みぐらいはあるよ！
でも、悪いほうに考えちゃうと、どんどん悪いほうにいっちゃうじゃん。
だから、俺は良い方に考えるんだ。
良い方に考えたら、気持ちも楽だし、
今まで見えなかったコトも、忘れていたコトも、
感じられるようになるじゃん。
その方が絶対、楽しいじゃん。