６６．蒼

何となく、目に入ったから…そう、目に入ったので、立ち止まってしまった。

「…？茂くん、どうかした？」
「いやなぁ…」
茂くんは、それ以外、何も言わず、１ヶ所を見ていた。
俺は茂くんの近くまで寄ってみた。
そこには特に見るようなモノはない気がした。
俺の様子に気付いたのか、茂くんは指を指した。
それでやっと気付いた。
「へぇ、こんな所に…」
「前にも出てたんよ」
「そうなの？」
「おん」
そこには、小さな芽が出ていた。
気付けば、そこの近くには何ヵ所も芽が出ていた。
「でも、最近までは全然出て来んかったんよ」
「…良く気付いたね」
「う～ん、何でやろうな？目に入ったんよ」

その後、俺達は、そこから離れた。

７８．何もない道

いつの間にか、ずっと続いていた雨が止んでいた。
久し振りの晴れ間な気がした。
本当はもう少し続く予定だった雨。

天気が変わったんだ。

秋の天気は変わりやすいって聞いた気がする。
窓から届く日差しが強い。

せっかく晴れたんだし、出掛けるか！

そう思い、外へ出た。
日差しは強かったけど、外に出たら、そうでもなかった。
日差しは強くもなく弱くもない。
只、空気は、何かちょっと詩めっ気がある感じで…だけど、嫌な感じではなく…何て言えば良いのかは、ちょっと分からないや。
でも、本当に嫌な感じではない。

だって、俺…何か歌を口ずさんでいた。

４０．記録機械

不思議な夢を最近、良く見る。
内容は、あまり覚えていなくて…でも、何かリアルな感じがする。でも、断片的に思い出すのは、全然、リアルじゃない。
その夢は、怖い夢でもないし、楽しい夢でもない。
只、淡々と話が進んでいく。
それが凄く普通で、自分だと思う登場人物も何の疑問もなく、進んでいく。
フッと起きると、何か凄く不思議な気持ちになっている。
この気持ちは何ていうモノなんだろう？
夢っていうのは、いろいろ暗示的なモノがあるような気がする。
夢占いっていうのもあるし…。
自分の夢はもし、占いで調べると、どういう意味をなしているのだろうな。
まっ、調べる気はないけど、まぁ、思い出して、調べる気があれば、調べてみるのも良いか。

９０．いくつもの偶然

僕があの子等とは、いくつもの偶然があって、出会ったと思う。
この空の下で、僕等は出会った。
僕やあの子等のいくつかの行動が重なり続け、この空の下で出会えた。
もし、どこかで一つでも違う行動をしてしまったら、会う事はない。
そしたら、今の僕はいない。
もし、僕があの子等に出会えてなかったら、僕はどうなっていただろうか。
あの子等は、どうなっていただろうか。
この空の下で、一緒に笑う事も話す事もなく…。
偶然に会っていても、多分、通り過ぎるだけで、認識はしない。
顔を知る事もない。
…駄目やな。そんなの辛いわ。
離れていても、繋がっている。
この空の下で、僕等は笑っていたり、怒っていたり、泣いていたりしている。
それが、何か不思議な感じがする。
あの子等に出会えたから、今の僕がいる。

ありがとう。